日本高血圧協会(Japanese Association of Hypertension:JAH) は、一般人の高血圧に関する啓蒙を目的として2005(平成17)年9月に設立されました。その背景には①一般庶民の認識と、②学問の進歩の間のギャップがありました。
①即ち高血圧は一番多い病気で、国民の約4分の1(約3,500万人)が罹患し、予備軍(高血圧前症)まで含めると、国民の約半分が危険域にあります。しかも殆ど無症状である為に軽視されがちで、たとえ治療していても降圧不十分で、降圧達成(140/90mmHg未満まで)の率は僅かに42%に留まっています。その結果、脳卒中や心筋梗塞・心不全などの発症が後を絶たず、国民の福祉や医療経済上も重大問題になっている、というのが社会の実状であります。
②一方、学問としての高血圧の研究の方は20世紀末までに長足の進歩を遂げて来て、その成果を実地応用すれば、今や高血圧はほぼ完全にコントロール可能な病気になっています。かくして学問の進歩と、一般社会の実態との間のギャップは急拡大してきました。
以上の様なギャップを埋めるべく、進歩した学問の成果を国民に還元し、国民の福祉に寄与する専門の活動機関として、日本高血圧協会が学問研究から分離されて立ち上げられました。国際的にも学会が先に出来て(国際高血圧学会:ISH, 1966年)、その後に一般市民啓蒙活動部門(世界高血圧連盟:WHL, 1988年)が分業化されてきた経緯があります。日本高血圧協会はWHLに2007年に正式加盟を果たしました。従って日本高血圧協会は国際的にはWHL、国内では生みの親である高血圧学会、などとも協力しながら、国民の高血圧啓蒙活動を徐々に始めております。 日本の研究業績は国際的にも高く評価されてきましたが、そこから派生した当協会も、親学会に肩を並べていける様に、世界に誇れる様な啓蒙活動の実を挙げなければならない、と肝に銘じています。
実際の手段としては、やはり市民公開講座が最も効果的と思われます。その高血圧市民公開講座は10年前、当時の日本高血圧学会会長の日和田教授によって学会開催地(広島)で開かれ、以来、それが慣例となって今日まで10年間続き、かなりの成果をあげてきました。但し、年1回、1地区だけの講座では、全国の高血圧患者数の前には焼け石に水の状態にあることを私は憂えてきました。効率を格段に高めるにはもっと頻繁に全国津々浦々で絨毯爆撃的な啓蒙運動が必要だと痛感してきました。日本高血圧協会はまさにその為に産まれた様なものと解釈しています。その為に目下各県に支部を設けつつあり、全国各地に在住の高血圧の専門家(高血圧学会の特別正会員:FJSH)の方々にもご協力をお願いして、各支部単位で少なくとも年1回以上の市民講座や、或いは各市町村単位でも独自の1村1品運動的な方法で、啓蒙運動を展開していって貰いたいと念願しています。
当面の目標は、高血圧治療中の患者の降圧達成者率(現在42%)を1~2年内に少なくとも50%には引き上げたいし、その後5年間位では、協会の活動も軌道に乗ってくるでしょうから、75%位までもっていきたい。それが実現出来れば、この道の世界トップランナーとして、世界の健康と福祉にも貢献出来るのでは? と夢を描いています。
皆様方のご理解とご協力を宜しくお願い申し上げます。
日本高血圧協会 会長
荒川 規矩男

