■高血圧と循環器合併症
私は38歳の男でサラリーマンです。私の両親とも高血圧で治療を受けていました。父親は残念なことに50代後半にがんで亡くなりました。母親は現在も高血圧の治療を受けていますが、幸い健在です。私は両親の血を引いていまして、定期健診で少しずつ血圧が上がってきています。高血圧を放置しておくと循環器合併症が起こると聞きます。合併症について具体的にお教えください。
高血圧にはほとんど特別な自覚症状がありません。しかし、放っておくと次第に脳・心・腎などの血管が傷み、ある日突然、終点(エンドポイント)すなわち、心臓病や脳卒中、腎不全などという死の淵に到着して、初めて高血圧の恐ろしさに気付かされます。「高血圧は沈黙の暗殺者(サイレントキラー)」といわれるゆえんです。
- 心臓病:心臓を養っている血管(冠動脈)も高血圧によって動脈硬化が促進されて細くなり、虚血性心疾患をきたします。すなわち狭心症(胸が締めつけられるなどの症状)や、心筋梗塞(冠動脈が詰まって起こる心臓の一部の壊死)です。また、心臓は高い圧に立ち向かって血液を送り出すために力まなければならないので、次第に心肥大をきたし、しまいにはバテて、心不全に陥り、胸が苦しくて夜眠れなくなったり、呼吸困難や浮腫が現れたりします。
- 脳卒中:脳の血管も高血圧によって動脈硬化が促進されて脆くなり、破裂したり(脳出血・クモ膜下出血)、詰ったり(脳梗塞)します。一命をとりとめても、手足 の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
- 腎不全:高血圧は腎臓の細かい血管でも動脈硬化を促進し、腎臓の機能、すなわち老廃物のろ過・排出に支障をきたします(腎不全)。最終的には尿毒症になり血液透析、あるいは腎移植が必要になります。
- その他
大動脈:大動脈の内膜が引き裂かれて中膜が解離したり(解離性大動脈瘤)、あるいは大動脈瘤破裂を起こします。
眼底動脈:しばしば眼底出血などをきたします。
■降圧薬は一生飲み続けなければいけない?
私は58歳の男で自営業を営んでいます。先日風邪を引き、近くの開業医を受診した際血圧も計ってくれて、182/98mmHgと血圧が高いと言われました。風邪が治ってから再度受診するように言われて、今回もやはり178/94mmHgで高血圧と診断されました。先生はすぐ降圧薬を飲んだほうがよいと言われました。本当に すぐ降圧薬を飲んだほうがよい のでしょうか。私の同業者から 一度降圧薬を飲み始めると一生飲み続けなければならない と、脅されました。本当でしょうか。
- あなたの高血圧は既にⅡ度(初期を過ぎて重症の一歩手前)ですから、早く降圧薬治療を受ける必要があります。同時に心臓や腎臓、眼底に異常がないか、あるいは糖尿病や高脂血症はないか、などの検査も受けてください。
- 高血圧の95%位は原因を特定できない本態性高血圧です。症状もほとんどありませんが、放置すれば命を危なくする脳卒中、心臓や腎臓の病気が待っています。しかしそれらは降圧薬を飲み続ければかなり予防できます。
- しかし、薬以前に生活習慣の是正、すなわち肥満があればこれを是正し、極力減塩し(食塩摂取量を1日6グラム未満)、運動を続ける(例えば、1日1万歩を目標に運動を続ける)ことがもっと重要です。それで降圧薬も減らせます。
■降圧薬の内服でがんになる?
私は70歳の女性です。高血圧で既に20年あまり降圧薬を内服してきています。
降圧薬の内服でがんになる ことはありませんか。この先も内服を続けてよいでしょうか、心配です。お答えください。
降圧薬の内服でがんになる ことはありませんか。この先も内服を続けてよいでしょうか、心配です。お答えください。
- 現在使われている降圧薬は「がん」を発症したり、「がん」を促進させることはありません。また、「がん」を予防することもないようです。安心して、降圧薬の内服は今までどおり続けてください。
- ただし、高血圧も「がん」も年齢が進むにつれて頻度が高くなりますので、高血圧と「がん」が合併することもあります。循環器疾患の治療のみならず、「がん」検診も定期的(年1回)に受けてください。
■高血圧と入浴
私は63歳の女性です。数年前から高血圧で治療を受けています。自宅の近くに温泉があり、よく入ります。高血圧患者には熱い湯はよくないと聞いています。
私のような 高血圧の治療を受けている患者には何度ぐらいがよいのでしょうか。また、どのくらいの時間お湯につかっていても大丈夫でしょうか。
私のような 高血圧の治療を受けている患者には何度ぐらいがよいのでしょうか。また、どのくらいの時間お湯につかっていても大丈夫でしょうか。
- 日本高血圧学会の「高血圧治療ガイドライン2009」によれば、高血圧患者さんの入浴の心得は、湯の温度は38~42℃くらいで、5~10分間入浴することを目安にすることです。
- 一般論として、高血圧患者さんは正常血圧者よりも入浴直後の血圧上昇が大きく、浴槽から出る時の血圧低下が大きい。しかもこれらの変化は、脱衣所と湯の温度との差が大きいほど増強されます。したがって、脱衣所の室温が20℃以下であれば、入浴前に十分にかけ湯をしてから浴槽にゆっくりとつかるようにしてください。
- 浴槽から急に立ち上がって出ると血圧が下がりすぎて、めまいや瞬間的に意識を失い、重大な事故につながることがあります。ことに飲酒後の入浴ではこのような変化が顕著になりますので、飲酒後の入浴は控えましょう。
- 冷水浴やサウナは避けましょう。
■高齢者に好ましい降圧薬
私は年ですがまだ農業をしている70歳の男です。長いこと血圧を測定してもらいませんでしたが、先日地域の検診で血圧の上が184、下が74(mmHg)でした。保健婦さんから治療を受けなさいと言われました。一応都会にいる息子に相談したところ、降圧薬にはいろいろある から先生によく相談するように言われました。とりあえず 私のような年寄りによく効く降圧薬 を教えてください。
- 血圧が繰り返し測定しても医療機関で140/90mmHg以上(家庭血圧では130/85mmHg以上)あれば高血圧と診断されます。まずは減塩を心がけることで、それで降圧不十分なら薬を加えます。
- 降圧目標は65歳以上でも一般には140/90mmHg未満です。ただし他に合併している病気があれば一律にはできませんので、全身状態をよく診察してもらってください。
- 降圧薬の種類では、高齢の場合、一般的にはカルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)か、またはアンジオテンシンのブロッカー(ARB、またはACE阻害薬)+少量の利尿薬併用が勧められます。
- 高齢では、他の病気をも合併していることも多く、その内容によって降圧薬の使い分けが必要です。例えば、糖尿病や腎臓病があればまずARB(またはACE阻害薬)、狭心症があればCa拮抗薬を用います。
- 数ヶ月間様子をみて、降圧不十分なら、2剤さらに3剤と組み合せて併用療法を行います。

