高血圧コラム

高血圧のよもやま話

味覚と高血圧 第一弾 塩味を愛してやまない日本人〜こっそり減塩のススメ〜

山陰労災病院 循環器内科
部長
水田 栄之助
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1. つらくない減塩、それが「こっそり減塩」

高血圧に「減塩」は欠かせません。

最新の高血圧管理・治療ガイドライン2025でも、地域や職域、学校といった集団での減塩の取り組みが強く推奨されています。

とはいえ、日本人にとって塩味は米飯にピタリと合う「ごちそうの相棒」。「減塩」と聞いただけで、「味が薄い」「おいしくない」「値段が高い」といったネガティブなイメージが抱かれがちです。

実際には食品技術の進歩でかなり美味しい減塩食品が増えているのですが、ラベルを見た瞬間に心が拒否してしまうのです。


ではどうすれば減塩を苦痛なく続けることができるのか?

ヒントは「こっそり」です。

英国では主食のパンに含まれる塩分を、国民が気づかないように少しずつ減らし、10年で1人あたり1日約1.4gもの減塩に成功。その結果、脳卒中や心臓病による死亡が40%も減りました。

今や世界中でこの「こっそり減塩」が広がっています。

2. 鳥取から全国へ。「こっそり減塩」への挑戦

日本人は、しょうゆやみそなどの調味料はもちろん、自分ではコントロールしにくい加工食品からの食塩摂取が多いです。

そこで鳥取県では産官学が手を組み、味を損ねることなく「こっそり減塩」を目指す挑戦が始まっています。

例えば、塩水処理や乾燥法を工夫することで食塩を約3割カットした「減塩干物」や、「つなぎ」に海藻の「あかもく」を使って食塩をほぼ0gに仕上げた「あかもくうどん」を開発しました。

保存やつなぎといった「塩味とは関係のない食塩」を減らすことで味を損ねることなく減塩に成功。

さらに「減塩」であることをあまり謳わずに提供しています。

従来品よりも「おいしさ」で勝負し、企業にとっても負担軽減や売上向上につながっています。

こうした活動をさらに広めて「知らないうちに減塩できるまちづくり」を目指しています。

「減塩食品なのにおいしい」から「減塩食品だからおいしい」。

そんな発想の転換が、これからの日本に求められています。