記事カテゴリ
生き物の血圧調節について

Contents
1. 各種生き物の血圧調節
本コラムは各種生き物の血圧調節についてお話いたします。
下表は代表的動物の収取期血圧の一覧です。
動物 | 収縮期血圧(mmHg) | 特徴・備考 |
ヒト | 約120 | 標準的な成人の値 |
イヌ | 110〜160 | 品種や年齢によって変動 |
ネコ | 120〜170 | ストレスで上昇しやすい |
ウマ | 約120〜140 | 大型動物だが比較的安定 |
ゾウ | 約180〜220 | 巨大な体に対応する高血圧 |
キリン | 約250〜300 | 首が長く、脳まで血液を送るので高血圧 |
マウス | 約100〜120 | 小型哺乳類、代謝が速い |
鳥類(ニワトリなど) | 約180〜220 | 高代謝で心拍数も速い |
魚類(例:サメ) | 約20〜40 | 水圧の影響を受けるため低め |
体の構造、特にキリンのように首が長い動物は、脳まで血液を送るために非常に高い血圧が必要です。代謝の違いで小型動物や鳥類は代謝が速く、心拍数も高いため、血圧も高めになる傾向があります。環境要因として水中で生活する魚類は、水圧の影響を受けるため、血圧が低くても循環が保たれます。
キリンの心臓は非常に強力で、厚さ約5cmの筋肉に包まれており、脳まで血液を押し上げる力を持っています。しかも頸静脈には逆流防止弁があってキリンが水を飲むときに脳への逆流を防ぎ脳うっ血にならないようになっています。ネコは動物病院で測定すると、緊張で「白衣高血圧」になることが多く、実際より高く出ることがあります。イヌより緊張しやすく環境による血圧変動が大きいということでしょう。
動物の血圧調節は、種ごとの生理的構造や生活環境に応じて非常に多様で巧妙な仕組みが備わっています。以下に、高血圧が著明なキリンについて考えてみます。
キリンの血圧調節機構
- 頚静脈の逆流防止弁:頭を下げたときに脳への血液の逆流を防ぎ脳うっ血を防止する。
- 奇網(ワンダーネット):頭蓋底にある毛細血管の網が、急激な血圧変化を緩衝し脳内血圧を一定に保つ。本来は体温を一定に保つ機構。
- 圧受容体反射:脳内圧の変化に応じて交感神経を調整し、血圧を安定化させる。
比較的若いキリンでも末梢動脈や心臓は極度に肥大し高い位置の脳血流を維持させるに十分な高血圧を呈します。一方、水を飲むときなど頭の位置を下げるときには頚静脈の逆流防止弁・奇網・圧受容体反射などによって急激な脳圧の上昇を予防します。したがって、首が長かったり(おそらく恐竜含む)、身長が高い動物では同様の機構によって脳血流を一定に保つ機構があることが推定されます。
キリンは極度の高血圧で、心肥大はありますが、不思議なことに心不全への移行や腎臓の臓器障害はないことが報告されています。このことはヒトの高血圧にも重要な示唆を与えているのではないでしょうか?キリンは葉っぱを主に食べていますので塩分をほとんど取りません。このことが高血圧はあっても臓器障害予防に関連するのではないかと推定されています[1]。おわかりですよね!減塩が如何に重要であるかということを示唆しています。
- Susic, D. and E.D. Frohlich, Hypertensive Cardiovascular and Renal Disease and Target Organ Damage: Lessons from Animal Models. Cardiorenal Med, 2011. 1(3): p. 139-146.