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「なぜ、太ると高血圧になるのですか?」 ―メタボリックドミノと臓器の緊張、そして高血圧 その③

1. メタボリックドミノと高血圧
下記リンクをご参照ください。
2. 高血圧の二つのタイプと肥満
下記リンクをご参照ください。
3. 肥満と臓器の緊張
栄養素の中で、糖分と塩分はわたしたちにとっても最も大切なものです。
糖分はエネルギー源となります。わたしたちは糖分と脂肪分から、酸素の力を借りて、ミトコンドリアとよばれる細胞の中にある装置で、ATPとよばれるエネルギー源をつくっています。ATPはわたしたちが生きていくために必要なお金のようなものです。
塩分は、血圧を作り出すために必要です。糖分、脂肪分や酸素を体の隅々にまで届けるためには、ある程度血圧を上げる必要があります。
わたしたちの腸は、この最も大切な二つの成分の糖分と塩分を同時に体に吸収するための‟運び屋”を持っています。SGLT(ナトリウムブドウ糖共輸送体)と呼ばれるものです。
SGLTは7つの仲間がいて、腸には、SGLT1(ナンバー1)があります。
実は、わたしたちが塩分、あるいは糖分をたくさん摂取してしまうとこの運び屋が活発になります。これは、わたしたちの体にとって大切な糖分、塩分が腸にやってくると、これは大切なものだから、なるべくたくさん体に取り込まなければならない!と腸が‟緊張”して、SGLT1を普段以上に働かせて、せっせと糖分、塩分を取り込もうとするのです。
塩分をたくさん摂っても、糖分をたくさん摂っても、この運び屋は活発になりますから、余分の糖分をとっても、たくさんの塩分が吸収されて高血圧になりますし、余分の塩分をとっても、糖分もたくさん取り込まれてカロリー過多、肥満、糖尿病になりやすくなるのです。
実は、SGLTのナンバー2,つまりSGLT2が、腎臓に存在します。通常、吸収した塩分や糖分が体に溜まりすぎないように、尿から一定量が排泄されています。しかし、たくさんの塩分や糖分が体に入りすぎて、あまりにも尿にたくさん排泄されるのを腎臓が感じると、腎臓は、もったいない!と思って、焦って“緊張”して、SGLT2の働きを活発化させて尿から再び体に取り入れようとします。腎臓と腸は同じ性格を持っているのです。SGLT2の働きを抑制するSGLT2阻害薬は、糖尿病、腎臓病の治療薬としていま大いに臨床の場で使用されています。大変効果があります。
体に必要以上にたくさん貯め込まれた塩分、糖分の情報は、脳にも伝わります。そして、脳そのものが過剰に‟緊張”します。脳もやはり、大切な二つの成分を、体の中で温存して、十分に利用したいと思ってしまうのです。その結果、血管を収縮させたり、また、通常では、塩分が体に多く溜まると分泌が自然に減るようになっているアルドステロンのリズムに狂いが起こります。
こうして肥満に伴って体のさまざまな臓器が過緊張をおこすことで、ギュッと型の高血圧とパンパン型の高血圧が同時に起こってしまいます。
過ぎたるは及ばざるがごとし、一定の範囲内で、塩分、糖分を摂取していれば、臓器たちは、うまく機能してくれるのですが、過剰に塩分、糖分が体に入ってきてしまうと、“緊張”して、むきになって、体に貯め込んでおこうとしてしまうのです。わたしはこれを「貪欲な臓器」と呼んでいます(図3)。
臓器たちが貪欲にならないようにすることが、高血圧をはじめさまざまなメタボリックドミノの病気に罹らないために大切です。適度な量の塩分、糖分を、適切な時間に取ることが大切な理由はまさにここにあります。(了)