高血圧コラム

高血圧のよもやま話

明るい未来のために、血圧を意識してみましょう

一般財団法人 沖縄北部医療財団
理事長
大屋 祐輔
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1. ガイドラインってなんのためにあるの?

2025年8月、「高血圧管理・治療ガイドライン2025」が6年ぶりに改訂されました。
ガイドラインとは、科学的根拠に基づいて病気の診断や治療の目安を示す“行動の羅針盤”です。
このガイドラインを作るために、約3年間、多くの医師や研究者が集まって、正しい情報の収集を続けて、それをまとめたものになります。
主に医療者が使いますが、患者さんやご家族、そしてこれから高血圧になるかもしれない一般の人にとっても、自分の健康を守るための大切な情報源になります。
今回の改訂は、日本人の血圧コントロールが十分とはいえない現状を踏まえ、「もっと分かりやすく、もっと実践しやすく」することを目指しています。

2. 目標は130/80mmHg未満に

最も大きな変更は、血圧の目標値です。
高血圧の診断基準(診察室で140/90mmHg以上、家庭で135/85mmHg以上)は変わりませんが、血圧をどこまで下げるかという目標が、年齢や持病にかかわらず「130/80mmHg未満」に一本化されました。家庭血圧では「125/75mmHg未満」が目安です。
さまざまな研究から、130mmHg未満を目指したほうが脳卒中や心臓病をより防げることが分かったためです。

人生100年時代、望ましい血圧は将来の健康を支える“資産”です。
その資産を早めに使い切らないように、日々、血圧を意識していきましょう。
今は症状がなくても、早めにしっかり下げておくことが、将来の病気予防につながります。

ただし、血圧は日々変動します。
1回の数値に一喜一憂する必要はありません。
家庭で測った平均値を見ることが大切です。
高齢の方や動脈硬化の病気をお持ちのかたでは、血圧の下げすぎによるめまいやふらつきなどが生じる可能性もありますので、注意が必要です。
主治医と相談しながら無理のない目標を設定します。

3. 生活習慣の改善のポイント

生活習慣の改善も、より具体的になりました。
減塩(1日6g未満)は継続ですが、新たにカリウムを積極的に採ることが強調されました。
野菜や果物に多いカリウムは、体内の余分な塩分を排出する働きがあります。

また、有酸素運動に加えて「筋トレ(レジスタンス運動)」も有効と明記されました。
有酸素運動と筋トレを上手に組み合わせてください。
たとえば、とても暑い日や雨の日は室内の筋トレを中心にするなど、主治医と相談しながら進めてください。

さらに、寒暖差を避ける、十分な睡眠をとる、便秘を防ぐ、ストレスをためないといった日常生活の工夫も重要です。
スマートフォンのアプリや尿で塩分バランスを測る機器など、デジタル技術の活用も期待されています。

4. お薬について

薬物治療についても見直しが行われました。
基本は1種類から始め、必要に応じて2〜3種類を組み合わせます。
しかし、薬物開始や薬物の追加について、あまり拒否的にならいようにお願いします。
今の降圧薬は、安全で効率よく血圧が下がるものがほとんどです。
体質や年齢、合併症によって最適な薬が異なるため、より適切な選択がガイドラインに示されています。
処方通りに飲み続けることが何より重要で、飲み忘れや副作用があれば正直に医師や薬剤師に伝えることが大切です。

さらに、脳卒中や心臓病のリスクが高い人では、薬を早めに始める方針が明確になりました。
血圧がそれほど高くなくても、年齢、喫煙、脂質異常症、糖尿病、腎臓病などの要因が重なる場合は、早期治療で将来の大きな病気を防ぐことを目指します。

5. むすび 最初の一歩を踏み出しましょう

今回のガイドラインが伝えているのは、「血圧を下げるために、今すぐ行動を」というメッセージです。
正確に測ること、生活習慣を見直すこと、医療者とよいパートナーシップを築くこと。この3つが柱です。
高血圧は特別な人だけの問題ではありません。
自分は大丈夫と思わず、明日の健康のために一歩を踏み出すことが、未来を変える力になります。(了)