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高血圧という病気とその原因
- A1.加齢と共に血圧が上がるのは生理的現象ですか?
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質問内容
私は69歳の退職男性です。40代から次第に血圧は上昇し、退職時には140/90mmHg前後でした。
これからはストレスからも解放され、血圧は正常に戻ると期待していましたが、逆に上昇を続けて、現在は150mmHg台、時には160mmHgを越えます。
昔の同僚からは、年と共に血圧が上がるのは当たり前で、何をお前は心配するのかと笑われました。
年齢と共に血圧が上昇するのは誰にでもみられる正常の生理的現象でしょうか。
お答え
年齢に関係なく血圧が高い状態が続くのは病気です
年齢とともに血圧が上がりやすい原因が積み重なるために多くの方の血圧が上昇しますが、これは正常の生理現象ではなく、れっきとした病気です。
生理現象ではないことの証拠として、ブラジルのアマゾンジャングルに食塩無しで住んでいる人達は、生涯を通じて正常血圧のままです。
彼らの食事はコレステロールや飽和脂肪酸も少なく、食べ過ぎによる肥満もみられず、日中は身体を動かす生活をしていて、生活習慣が血圧に対して良い状態だからと考えられています。130/80mmHgを超えたら危険信号で、現在の血圧は明らかに治療が必要なレベルです。医療機関を受診してください。
- A2.高血圧は動脈、静脈いずれの病気ですか?
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質問内容
私は62歳の家庭の主婦です。近くの医院で高血圧の治療を受けています。
最近両下肢の血管(静脈)がコブのように膨らんで目立つようになり、静脈瘤と診断されました。また、長く立っていると下肢がむくみます。
高血圧の治療を受けているのに、なぜ静脈瘤ができてきたり、下肢のむくみがでたりするのでしょうか。お答え
動脈にかかる圧力が高くなる病気です
一般に高血圧といっているのは、動脈の病気で, 静脈は関係ありません。
静脈の圧は、通常動脈の圧よりずっと低く、動脈高血圧には影響されません。あなたの下肢の静脈瘤は高血圧が原因でできたものではありません。
下肢のむくみは静脈瘤のためと思いますが、カルシウム拮抗薬という種類の降圧薬の副作用としてむくみが来る事もあるので、先生とよく相談して下さい。
- A3.高血圧はよくサイレントキラーと言われていますが、その理由は?
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質問内容
私は35歳の男性で、工場で主に機械の整備などの仕事に従事しています。
現在のところ定期健診で高血圧と言われたことはありませんが、両親とも高血圧の治療を受けています。
自分もその内に高血圧になるのだろうかと思っていたところ、会社の診療所に「高血圧はサイレントキラー」と書かれたポスターが掲示してありました。
なぜ高血圧がサイレントキラーと言われるのか理由を教えて下さい。
そして、高血圧にならない注意点を具体的に教えて下さい。
お答え
高血圧は死に至る病の原因でありながら症状がなく、音もなく忍び寄る殺人者に似ているからです
「サイレントキラー」は「静かなる殺人者」、あるいは「忍び寄る殺人者」などと訳すことができます。
高血圧は長期間放置しますと心臓や脳、腎臓に障害をきたし、最終的には心筋梗塞や脳卒中を起こします。
かなりの期間は高血圧そのものによる症状は全くありません。
したがって、徐々に体がむしばまれているのに気付かず、ある日突然、大きな病気が発症して死亡に至らしめる病気という意味で「サイレントキラー」とも呼ばれるわけです。高血圧にならない注意点ですが、若い頃からの生活習慣、たとえば減塩、肥満の予防(食べ過ぎに注意)、運動(よく歩く)、節酒、ストレスの解消、十分な睡眠などが大切です。
血圧が高めの人は家庭血圧の測定により日頃から血圧に関心を持つこと、医師による定期的な診察をおすすめします。
- A4.高血圧の種類は?
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質問内容
私は40歳のサラリーマンです。最近血圧が高くなり、病院で種々の検査をした結果、腎性高血圧といわれました。
これは普通の高血圧と違うのでしょうか。
お答え
多くの原因が積み重なった本態性高血圧と、特定の原因による二次性高血圧に分かれます
高血圧のうちおよそ90%は様々な原因が積み重なって中年以降からゆっくりと血圧が上がる本態性高血圧です。
原因は高食塩摂取や肥満、ストレスなどの環境因子と体質(遺伝因子)からなります。
残りの10%が二次性高血圧といわれるもので、高血圧の原因が明らかで、原因に対する根本的な治療により血圧は低下します。腎性高血圧も二次性高血圧であり、腎炎やのう胞腎などにより血圧が上がります。
蛋白尿・血尿や腎機能の低下を伴うことがあります。
腎炎の治療や腎臓を保護する(減塩や蛋白質摂取制限など)ことが必要です。また腎臓に行く動脈が狭窄しても血圧が上がります。
この場合は腎血管性高血圧とよんでいます。
- A5.高血圧は遺伝しますか?
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質問内容
わたしは42歳の中小企業の役員です。
最近かかり付けの先生から、血圧が高く降圧薬を飲み始めた方が良いと言われました。
私の祖父、父親はいずれも高血圧症でした。また兄も数年前から降圧薬を飲んでいます。
高血圧症は遺伝するのでしょうか。
お答え
遺伝もありますが、親子で生活習慣が似ていることも遺伝のように見える原因です
高血圧のうちおよそ90%占める本態性高血圧は複数の遺伝因子と環境因子が関与するもので糖尿病や脂質異常症などと同様、多くの因子が複雑に関与する疾患です。
遺伝子が関わる程度(寄与度)は大雑把には半分程度までです。
日本人では特に食塩に対して血圧が上がりやすいタイプの遺伝子を持っている人が多いといわれています。
いわゆる体質として遺伝しますので親族に高血圧の人がいる方は高血圧になりやすいといえます。
このような方はとくに減塩、肥満対策など生活習慣に気をつける必要があります。もう一つ別の考え方があります。
両親が塩分多めの食事をしている場合、子供もその味付けに慣れてしまい大人になっても濃い味付けの食事になりがちです。
遺伝の要素以上に食事に関して育った環境が大きく働くことがありえるということです。
逆に、高血圧になる遺伝の要因が強かったとしても、食生活や運動について気を付けていれば高血圧が発症しないこともあります。このような一般的に良くある話とは別に、極めて稀な疾患として一つだけの遺伝子の異常によっておこる遺伝性高血圧があります。
この場合は家族性発症がみられ、子供の時から非常に高い血圧値を示します。
高血圧の診断と検査
- B3.家庭血圧測定の注意点と家庭血圧の高血圧基準
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質問内容
私は70歳の女性ですが、すでに10年以上近所の診療所で高血圧の治療を受けています。
先月懸賞が当たり手首で測る血圧計をもらいました。
そのことを先生に話しましたら、1日2回朝と晩に血圧を測って記録を受診の時に持ってきてくださいと言われました。
家庭で血圧を測る際の注意点は聞きましたが、もう一度詳しく注意点をお聞きし、コピーをして壁に貼っておきたいと思います。
家庭血圧測定時の注意点と家庭血圧値の方が、先生が測る血圧値よりだいぶ低いので、家庭で測った血圧による高血圧の判断基準値を教えて下さい。
お答え
家庭血圧での高血圧基準は135/85mmHg
家庭血圧測定時の注意点:「血圧手帳」に記載している内容を書き写します。
(「血圧手帳」は日本高血圧協会のホームページからご覧いただけます)1) 血圧は朝と夜に、それぞれ2回ずつ測定してください。
朝:起床して一時間以内、排尿後、お薬を飲む前、朝食前
夜:就寝前
低い値が出るまで何回も(4回以上)測るのはよくありません。
2) 測定した値は1回目からすべて記録してください。一番低い数値だけを書くことはよくありません。
3) 静かで、快適な室温の部屋で、背もたれ付きの椅子に足を組まずに座って、1~2分間安静にし、リラックスしましょう。
4) 測る腕の部分と心臓を同じ高さに保ってください。
5) 薄い着衣の場合は、その上にカフ(腕帯)を巻いてもかまいません。
6) 測定中は会話をしないでください。
7) 測定前に喫煙、飲酒、カフェイン(コーヒー、お茶など)の摂取は控えてください。
マンシェット(上腕に巻くゴム嚢)や手首の場合は血圧計が心臓と同じ高さになるようにすること。
測定期間はできるだけ長期間が望ましいです。
普通1週間の平均値(5日間以上。朝および晩、別々に計算します)を診断にもちいます。このようにして求められた家庭血圧の値は、一般的に外来よりも低めです。
家庭血圧の基準値は135/85mmHg以上を高血圧としています。
詳細は、このQ&AのB1をご覧ください。
- B4.白衣高血圧・仮面高血圧
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質問内容
私は50歳のサラリーマンですが、先日かかり付けの先生から「あなたは白衣高血圧ですから今のところはそう心配する必要はありません」と言われました。
放置しておいてよいのでしょうか。
また仮面高血圧というものもあると聞きました。これらはどのような高血圧でしょうか。
お答え
白衣高血圧は経過観察だが要注意、仮面高血圧は通常の高血圧と同じく要治療の病態です
医師などによって医療機関で測定された時にだけ高血圧の基準値を超えるのに、診察室以外の場所(自宅など)では高血圧の基準に達しない場合を白衣高血圧といいます。
医師が普通白衣を着て診察しているので、白衣を着た人の前に出ると緊張して血圧が上がるのではないかと考えられて名前がつきました。
病院の待合室の自動血圧計で自分で測定した血圧は高血圧ではないのに、医師の前に座ったとたんに高血圧になる場合も、白衣高血圧です。
患者さんによっては診療所や病院などの玄関を入ったとたんに高血圧になる人もいます。白衣高血圧は脳卒中や心臓病などの脳心血管病を発症する危険な状態ではなく、すぐにお薬を使った治療はしません。
しかし、将来高血圧になる確率が高く、血管や心臓などに高血圧によると思われる軽度の障害が検査で認められる場合もありますので、半年あるいは1年毎の定期的な診察は必要です。
さらに、定期的に自分でも家庭血圧を測定し、血圧が上昇してこないかチェックしておくことが大切です。高血圧を治療中の方で、診察室だけ血圧が高く、家庭血圧などが正常の場合は、白衣現象(白衣効果)を伴う高血圧と呼びます。
白衣高血圧の名称は、正確には未治療の方での名称です。ご質問の仮面高血圧とは、白衣高血圧とは逆に診察室の測定値は高血圧ではなく、職場や家庭での測定値が高血圧の場合です。
高血圧が仮面によって隠されているという意味で仮面高血圧と言います。
未治療の人でも治療中の人でも同じ呼び方です。仮面高血圧の原因としては、職場や家庭での高いストレスによる血圧上昇、睡眠時無呼吸症候群(睡眠中に呼吸が止まっていることがある病気)、降圧薬を朝に内服していて夜から朝にかけて薬の効果が消失することによる血圧上昇などがあります。
ある研究によれば、降圧薬内服中の患者さんの10~30%は仮面高血圧であると報告されています。
そして、仮面高血圧の患者さんは血圧が良好にコントロールされている患者さんに比較して約3倍も脳卒中や心筋梗塞などが発症しています。
仮面高血圧を見つけるには、家庭や職場で、自分で血圧を測定する(もし職場に診療室があれば看護師さんに測定してもらう)ことが必要でしょう。
- B5.昼と夜で血圧が違うことは普通ですか?
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質問内容
私は42歳の男性です。
血圧のことが気になっていましたので病院で詳しい検査を受けました。
II度高血圧であると言われ、24時間血圧を測定したところ、普通夜間寝ている時には血圧は昼間より下がるそうですが、寝ている時も血圧は高いままの状態でした。
以下の3点について分かりやすくお教え下さい。血圧の日内変動について。
私のように夜間も血圧が下がらないのはなぜでしょうか。
生活習慣の改善(努力はするが、外国での仕事上困難)と降圧薬療法により血圧を下げていれば、夜間下降するパターンに戻るのでしょうか。
お答え
夜の血圧は昼より低いのが普通です
42歳とのことですが、若い頃からきちっと24時間にわたり血圧をコントロールすることはとても大切なことです。
血圧の日内変動に関する3つのご質問への回答は以下の通りです。血圧の日内変動について:24時間にわたって1~2時間ごとに測定した血圧は、昼間の覚醒時より夜間の就眠時に10%~20%下がるのが正常パターンです。
一方で、夜間に逆に上がる人、昼間と夜間であまり変わらない人、夜間の下がりが大きすぎる人もいらっしゃいます。
このようなパターンの人は、脳卒中や心筋梗塞などの脳心血管病の危険性が高いことが知られています。夜間に血圧が下がらない原因:必ずしも明らかではありませんが、昼間に十分にナトリウムが排泄されておらず、夜間も高い血圧を維持して腎臓への血流を増やしてナトリウムを排泄しようと体の調節が働いている可能性が考えられています。
生活習慣の改善や降圧薬治療によって夜間下降するパターンに戻るか?:減塩やストレスの軽減、十分な睡眠など生活習慣の改善と、ナトリウム排泄に働く降圧薬の使用、降圧作用の長いお薬の使用、お薬を就眠前に服用するなどの工夫などにより夜間降圧型に戻すことは多くの場合可能です。
- B6.高血圧の治療の前に受ける検査は?
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質問内容
私は42歳の男性サラリーマンです。先日職場健診で高血圧を指摘されました。
健診担当の医師から、ここ2,3年で血圧は上昇しており、本格的な高血圧の治療に入りたいと言われました。
そのために、先ず検査をしますと言われ医師の勤務する病院での予約を致しました。
なぜ高血圧の治療前に検査が必要ですか。お答え
血圧の値だけでなく全身をチェックして治療方針を決定します
あなたの高血圧が特殊な原因による二次性高血圧か否かを検査によって調べます。
治療方針が全く異なる病気のことがあるからです。
また、高血圧は脳、心臓、腎臓、動脈(例えば大動脈や首や足の動脈、目の網膜の動脈)などを痛めますので、それらの臓器の障害がどの程度進んでいるかも検査します。
具体的には、身体診察、血液や尿の検査、必要に応じて心電図やレントゲン検査などです。高血圧以外に、脳卒中や心臓病、動脈硬化に対する危険因子の有無を調べます。
例えば、メタボリックシンドローム、糖尿病、脂質異常症などの有無、現在の生活習慣に関する聞き取り、血縁者に若い時の脳卒中や心臓病があるかどうかなどです。本当に治療が必要な高血圧かどうかも調べます。
医師の前や健診時に測定した血圧は高いが、それ以外の時は全く正常という人もいます。
「白衣高血圧」と呼ばれる状態で、いずれ本当の高血圧になる確率は高いので注意はしますが、少なくともお薬による治療は始めません。以上のように、高血圧は全身を総合的に診察して初めて治療方針が決まるために、治療前に検査が必要になるのです。
- B7.特定健診の結果で治療の必要な高血圧は160/90mmHg以上???
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質問内容
58歳の会社員です。特定健診を受けたら154/88mmHgでした。
生活習慣に気を付けて下がらなければ医療機関を受診するようにという説明がついてきました。ネットで調べたら高血圧の基準が160に変わったという記事がありました。
去年も148/84mmHgで同じ説明でした。私は本当に病院に行かなければならないのですか。
忙しいし、周りの人も大したことないと言うし、できれば行きたくないのですが。お答え
140/90mmHg以上です。誤解を与えるネット情報には要注意
特定健診で用いられている血圧の受診勧奨判定値では、上の血圧が160mmHg以上や下の血圧が100mmHg以上の方に対して「すぐに医療機関の受診を」、それより低い値の高血圧のレベルに対しては「生活習慣を改善する努力をした上で、数値が改善しないなら医療機関の受診を」と記載されています(令和6年度)。
前者だけを強調して、後者を無視したようなネット情報がありますが誤った情報です。上の血圧が140~159や、下の血圧が90~99はⅠ度高血圧ですが、健診での血圧の測定環境に問題がある場合や、生活習慣の自己管理が徹底されれば血圧が正常化する場合もあるレベルのために、1か月程度自分で生活習慣の改善に努めたうえで再度血圧を測定して医療機関の受診を判断してください。
ただし、質問された方は、既に健診で2回続けてⅠ度高血圧でした。生活習慣を改善する努力を本人なりにしたけれど、数値が改善しなかったようですので、できるだけ早く医療機関を受診すべきです。
忙しいと言っても退職後のご自身の健康を考えると受診した方が良いことは多くの研究結果から明らかです。
周りの人の言葉は心配させないようにという配慮かもしれませんが、どこかの誤ったネット情報や週刊誌情報を切り取った可能性もあります。
迷ったときは、信頼できる医学団体(日本高血圧協会や日本高血圧学会)の情報を確認するようにしてください。
高血圧の予防と治療のための生活習慣の改善
- C1.減塩は高血圧の予防になりますか?
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質問内容
私は40代の主婦ですが、テレビや週刊誌で減塩の必要性がよくとりあげられ、減塩の料理本も多く出されています。
今のところ我々夫婦は高血圧にはなっていませんが、今から減塩食を始めた方がよいのでしょうか。
また減塩するとした場合、どれだけ厳密に守らなければならないのでしょうか。お答え
減塩は高血圧の予防になります
食塩の摂り過ぎは高血圧ばかりでなく、直接脳卒中や心臓病、腎臓病などの原因にもなります。
また最近では日本人に多い胃がんや骨粗鬆症などの原因にもなることも分かりました。
従って減塩は最も安価な脳心血管病(脳卒中や心臓病など)やその他の多くの疾患の予防法といえます。現在高血圧になっていない人達にも減塩は大切なことです。
一緒に暮らす子供さんがいらした場合、子供たちも同じ食習慣が身につきますので、早くから減塩を心がけることは子供の健康を守ることにもつながります。日本高血圧学会では、国民の高血圧予防や治療、さらに健康維持のために1日の食塩摂取量を6g未満とするよう推奨しています。
常日頃減塩を意識することから始め、徐々に慣れていくことが最初の段階です。
日本人の食パターンでは、減塩を実行することは実際には容易ではないのは確かです。
ただ、様々な工夫の仕方があること、徐々に減塩していくと体が慣れていくことは事実です。既に調理された食品類やカップ麺などには思った以上に食塩が含まれています。
食品を購入する際に食塩相当量の表示を見る習慣をつけ、減塩の工夫に取り入れて下さい。
- C2.高血圧の塩分犯人説は終わっている???
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質問内容
私は高血圧で薬を飲んでいる40歳代のサラリーマンです。
かかりつけの先生から塩分摂取を減らすように言われていますが、最近週刊誌で塩分を減らしても血圧は下がらない、アメリカでは高血圧の塩分犯人説は終わっていると書かれていました。
これは本当なのでしょうか。お答え
減塩の効果は血圧だけでなく、脳卒中を減らし、死亡を減らすことまで明らかです
塩分摂取量が多いと血圧が上昇することは、これまでに国内外の研究から明らかにされています。
たしかに減塩効果の大きい人と小さい人がいますが、減塩によって血圧が上昇することはありません。
食塩の摂りすぎは、心不全、腎機能障害、腎がんの発症に関与する可能性も指摘されています。日本高血圧学会は、高血圧の生活習慣改善に1日の食塩摂取量6グラム未満を推奨しています。
世界保健機関(WHO)は1日5グラム未満を推奨しています。
大事なことは、5~6gに塩分を制限しても身体にとってマイナスにはならないことです。減塩の効果がないような情報のもとになっている研究については、食塩摂取量の測定法の誤りや、研究の仕方の誤りなどが指摘されています。
代替塩(減塩しお)といって食塩の中のナトリウムの一部をカリウムに置き換えた塩も売られています。
25%置き換えた「減塩しお」で生活した人たちは、100%がナトリウムのままの通常の食塩で生活した人たちと比較して、約5年の間に脳卒中発症が14%、全ての原因による死亡が12%少なかったことが報告されました。
高カリウム血症という心配される状況は増えませんでした。
(出典:N Engl J Med 2021; 385:1067-1077)「減塩しお」や減塩食品を上手に使うことも減塩のひとつの方法です。
ただし、腎臓病が進んでいる人では注意が必要な場合がありますので、かかりつけの先生に相談してください。
- C3.減塩の確認方法
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質問内容
私は現在70歳で年金生活をおくっていますが、診察時に何度も減塩の重要性を言われ、自分でも1日6gをめざし、出来るだけ塩分を取らないよう食事に気をつけています。
今の食事でいいのかどうかわからないのですが、塩分摂取量はどうしたらわかるのでしょうか。お答え
自分がどれだけ食塩を摂取しているかを知ることは大事です。
正確な値を調べることは難しいのですが、摂り過ぎか、適切な範囲かを知る方法はいくつかあります。
血圧手帳にも記載されている「塩分チェックシート」(オリジナル版は、監修:社会医療法人製鉄記念八幡病院 𡈽橋卓也先生、山﨑香織先生で、以下のURLから確認可能:https://www.ns.yawata-mhp.or.jp/salt_check/)を利用する。
購入する食品に表示されている「食塩相当量」のグラム数を足し合わせることで、明らかに多い場合は気が付くと思われます。
かかりつけの先生にお願いして尿の中のナトリウム量を測定してもらって判定してもらう。
- C4.ストレスと血圧
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質問内容
私は45歳のサラリーマンです。今年の春異動があり職場が変わりました。
なかなか新しい職場になじめずストレスを感じています。
それと関係があるかどうかわかりませんがこれまで降圧薬を飲んで血圧はコントロールできていたのですが、最近はかなり血圧も高くなり、これまでの降圧薬では十分な降圧が得られなくなりました。
ストレスで血圧は上がるのでしょうか。お答え
ストレスは血圧上昇の一つの原因です
ストレスとは「緊張をもたらす事柄や状況」のことであり、精神的ストレス(怒り、不安、驚きなど)や肉体的ストレス(力をこめる、外気温の急激な変化など)があります。
現代の日本はストレス社会と言い表されるほど、日常生活において精神的ストレスを感じる場面が多いことで知られています。何らかのストレスがかかると、普段の血圧は正常でも、中には血圧が急激に正常値を超えて上がってしまう人がいます。
特に仕事中に現れる高血圧は、「職場高血圧」という名前が付けられているほど代表的なものであり、肥満の人や、両親や兄弟などが高血圧であるという家族歴のある人に多いという傾向がみられます。
このようなストレスによる高血圧は、職場での血圧測定や、まる1日血圧を測る24時間自由行動下血圧測定(ABPM)などで発見できます。
早朝などほかの時間帯でも血圧を測ってみて、かかりつけの医師に相談してみましょう。お薬で治療中の方も、ストレス増大が血圧を押し上げていることがあります。
退職を契機に血圧が下がったり、休日はお薬を減らすことで丁度良かったり、海外出張が減ると血圧が安定したりと、確かに仕事のストレスが影響していると思える患者さんはいらっしゃいます。
ストレスで上がっている血圧を下げるのにストレスを減らすことが難しい場合が多いため、お薬の調整で目標の血圧を保てるように調整しますが、ストレスの発散方法を身につけ、ストレスと上手につきあっていくことも心掛けてください。
- C5.運動選手は高血圧になりにくい?
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質問内容
私は40歳のサラリーマンで、学生時代に陸上競技をしていて、今も市民ランナーとして各地の市民マラソンなどで走っています。
最近、運動選手は高血圧になりにくいということを聞きましたが本当でしょうか。お答え
本当です。ただし、高血圧になる人もいらっしゃるので注意は必要です
若いときの運動競技、特に耐久性の運動をしていた人は晩年に高血圧になりにくく、運動習慣は生涯にわたり高血圧の予防に役立つ可能性があることが報告されています(出典:Physiol Rep. 2022;10:e15364)。
ただし、一定の割合で高血圧を発症しており、運動選手であっても他の方と同様に、高血圧の原因になる食塩の過剰摂取など生活習慣に気を付け、定期的に血圧をチェックすることは大事です。
高血圧の治療と血圧の薬
- D1.降圧薬は一生飲み続けますか?
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質問内容
私は56歳の会社員です。以前から健康診断で血圧が高めと指摘されていましたが薬はのんでいませんでした。
先日の検査では168/94mmHgで、先生から降圧薬を飲んだほうが良いといわれました。
友人からは一度降圧薬を飲むと一生飲み続けなければならないと聞いています。
本当でしょうか。お答え
少なくとも自分のことが自分でできている間は、飲み続けることのメリットが大きいです。高血圧治療は一病息災につながります
高血圧は生涯治療だといわれていますが、これは必ずしも生涯お薬を飲み続けることではありません。
確かに多くの方は生涯にわたって薬が必要です。
一方で、定年によりストレスが減って血圧が正常化する方もおられるし、減塩や減量、運動療法が成功し血圧が下がることもよくあり、このような方では降圧薬が不要になります。
また、夏期は血圧が正常になる人もおられます。
大事なことは、家庭血圧の測定値、定期的な受診によって、主治医の先生に降圧薬の減量や中止を決めていただくことです。
中止したあとも定期的に経過を見ていただくことも大切で、もし血圧が再度上がるようでしたら、降圧薬を再開します。
念のために付け加えますが、自分の判断で自己調整することは良くありません。高血圧の人がすべて脳卒中や心臓病になるわけではないので、薬を飲まなくても私は大丈夫と思う方もいらっしゃるかもしれません。
薬を飲んでいたから100%予防できるわけでもありません。
ただ、十分に多くの研究の結果、お薬を飲んでしっかり血圧を下げることによって脳心血管病(脳卒中や心臓病など)の発症する危険性は確実に下がるのことは明らかです。
大きな病気が発症してから治療やリハビリテーションで苦労して後悔するより、朝1回の薬を飲んだ方がずっと効率が良く、個人にとっての利益も大きいと言えます。高血圧の治療は、どの段階から始めても、どのレベルから始めても一定の効果はありますが、早い段階から治療することで血管や臓器が傷むのを抑えられ、長い目で見た効果は大きくなります。
一生飲むことになったとしても、早くから始めることで少ない量で済む可能性も高いです。高血圧をきっかけに「一病息災」と思えるほど体全体の診察をしてもらえるので、様々な病気の早期発見・早期治療も期待できます。
高血圧は、「早く見つかって良かった」病気とも言えます。
- D3.収縮期血圧と拡張期血圧のどちらが高血圧の治療では重要か
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質問内容
私は52歳の家庭の主婦ですが、上の血圧が142位で、下の血圧が98位です。
先生から高血圧と言われていますが、どちらの血圧を下げたらよいのでしょうか。
上の血圧と下の血圧のどちらがより重要でしょうか。お答え
収縮期血圧と拡張期血圧の両方とも大事です
上の血圧(収縮期血圧)は心臓が収縮して全身へ血液を送り出す圧です。
心臓が収縮した時に全身に送り出される血液の圧力は、太い動脈を押し広げます。
押し広げられた太い動脈が元の形に戻ろうとして収縮する力で、血液はさらに体の隅々まで送られます。
この時(心臓の拡張期、太い血管の収縮期)に生じる圧が下の血圧(拡張期血圧)です。上の血圧も下の血圧も、全身に血液を送り出すのに重要で、どちらが大事とは言えません。
両方とも大事であり、両方とも高い状態は血管を傷める元凶になります。正常な状態では、太い血管の弾力があるために大きく押し広げられ、元に戻る力も強くなります。
若い人はまだ血管の弾力があるので、高血圧になった時、上の血圧だけでなく下の血圧も上がります。
質問の方も52歳とまだ若いので上と下の両方の血圧が上がっています。一方で、高齢になると様々な理由で血管の弾力が落ちて心臓の収縮期に大きく押し広げられることがありません。
その分、血管が元に戻ろうとする力も小さくなるので下の血圧はむしろ下がります。
国民全体でみると、上の血圧は年齢とともに上昇が続きますが、下の血圧は60歳ごろから少しずつ下がりだします。この結果、上の血圧(収縮期血圧)だけが高くて、下の血圧(拡張期血圧)はむしろ低いタイプの高血圧が生じます。
動脈硬化が進んだ結果として下の血圧が下がっただけですので、上の血圧が高いままだとより危険な状態です。このように、上も下もいずれの血圧も高くなっている状態は異常で、どちらも下げるのが原則です。
ちなみに、上だけを下げる薬や、下だけを下げる薬はありません。
- D4.微量アルブミン尿は改善するか
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質問内容
私は55歳のサラリーマンです。会社の健診で今回腎臓から微量アルブミン尿が出ていることを指摘されました。
3年前にメタボリックシンドロームと診断されていました。
先生から生活習慣の改善を指導され自分では頑張っているつもりです。現在血圧は144/86mmHgです。
腎臓の障害をくい止めるためには降圧薬の内服が必須でしょうか。先生はそのように話されます。お答え
適切な治療により改善することが多いです
通常の診察では、糖尿病の方の腎障害を調べるために微量アルブミン尿を測定します。
健診ということで腎障害の早期発見のために微量アルブミン尿を測定されたものと思います。24時間にわたり厳格に降圧すれば、その進行を阻止出来ます。
降圧の目標は130/80mmHg未満(家庭血圧の場合は125/75mmHg未満)です。
質問に体重が記載されていませんが、肥満があれば肥満の改善によっても血圧が下がることが多いので、降圧薬を減らしたり止めたりできるかもしれません。
- D5.高齢者に好ましい降圧薬
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質問内容
私は農業をしている70歳の男性です。
長いこと血圧を測定してもらいませんでしたが、先日地域の健診で血圧の上が184、下が74(mmHg)でした。
保健婦さんから治療を受けなさいといわれました。
一応都会にいる息子に相談したところ、降圧薬にはいろいろあるから先生によく相談するように言われました。
とりあえず私のような者によく効く降圧薬を教えて下さい。お答え
一般の方と同じです。むしろ合併する病気や薬の副作用などを考えてその人に合った薬を選びます
70歳の男性で農業に従事されているということですので、一般の成人と同じ治療方針で、降圧薬も特別なものはありません。
むしろ、個々の患者さんの病態や副作用の反応に合わせて薬を選びますので、まずは医療機関を受診してください。息子さんがおっしゃられる通り、血圧を下げる薬は様々な種類があります。
「副作用かも?」と思う症状が出ても、代わりの薬がありますので先生によく相談しながら最終的にご自身に合った薬を選ぶことになります。薬も1つではなく、血圧の下がり方に応じて2剤目を追加することが多いです。
2種類の薬を1つにした薬剤もあります。184/74mmHgという血圧はかなり高い血圧です。
是非とも、医療機関を受診して本当に血圧が高いかどうかの確認、高血圧の原因の診断、他の病気の合併の診断を受けてください。
それに基づいて適切な薬剤を選択することになります。
- D7.血圧を下げると認知症になるのか?
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質問内容
72歳の父親のことですが、10年前くらいから高血圧の治療をしています。
最近物忘れ等がひどくなり、認知症ではないかと心配しています。
血圧を下げ過ぎると認知症が進むと聞いたことがありますが、このまま降圧薬を飲み続けて大丈夫でしょうか。お答え
脳血流低下が続けば認知機能に影響する可能性がありますが、副作用が出ていなければ基本は治療を継続します
血圧のこととは別に、まずはもの忘れ外来などを受診して、認知症の検査を受けてください。
認知機能が低下する原因も多々あります。治療可能な認知症もあります。
認知症と診断されても、今後どのように病気と付き合っていくのが良いかを担当の先生たちに伺うことで、ご本人もご家族も心構えができることも大事です。降圧薬については、血圧低下と関連したふらつきなどが出るほどの下がり過ぎでなければ、治療継続を考えます。
降圧薬を急に中止することで脳卒中を発症して麻痺が生じるようでは、生活に支障をきたすことになりかねないからです。
血圧レベルがご本人にとって適切なレベルかどうかは、家庭血圧値や診察時の検査、ご本人の体の全体的な状況などを基に判断しますので、医師に相談してください。
降圧薬内服の基本方針は、「副作用が出ていなければ継続する」です。一方で認知機能が低下することによって、薬の内服が不正確になることがよくあります。
飲み忘れだけでなく、二重に飲んでしまうことも問題です。
飲み忘れをなくすような工夫や、ご家族などによる服薬状況の確認が必要な場合も増えます。
高血圧と合併症
- E1.痛風と降圧薬
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質問内容
私は52歳の男性教員です。
父親の血を引いたようで、30歳の半ばごろから年に1回ぐらいの割りで痛風発作に悩まされていました。
幸い高尿酸血症の治療薬を内服することで、ここ10年間、痛風発作は出ていません。
ところが、2~3年前から血圧も上がりだし、血圧の治療を受けようかどうか迷っているところです。血圧は今年の健診時152/90mmHgでした。
降圧薬の中には痛風に悪い薬もあると聞いています。今後の治療方針についてご教示下さい。お答え
サイアザイド系利尿薬に要注意
152/90mmHgという血圧レベルですので、生活習慣の改善に加えて血圧を下げる薬が必要になると思われます。
痛風の人に悪いとされる薬は、サイアザイド系利尿薬です。
尿酸の腎臓からの排泄が減るので、血液の尿酸値が高くなり痛風発作につながることが心配されるためです。尿酸の排泄に悪影響を与えない薬であれば良いのですが、一部のARB(ロサルタン、イルベサルタン)やサクビトリルバルサルタン(商品名:エンレスト)などは尿酸降下作用があるので高尿酸血症がある人に適していると言えます。
いずれを用いるにしても、十分に血圧を下げることが大事です。高尿酸血症に対する生活習慣の改善は、高血圧にも良い方向に働きます。
特に肥満者やメタボリックシンドロームの患者ではカロリー、プリン体の多い食事、ビールなどを制限しますので、肥満の改善が血圧にも良い影響を及ぼします。
- E2.喘息と降圧薬
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質問内容
私は64歳の家庭の主婦です。数年前から高血圧になり、カルシウム拮抗薬で治療を受けています。
最近次第に血圧が上がってきていまして、朝測定する家庭血圧でも上が140mmHgをしばしば越えます。
先生はもう1種類別の降圧薬を追加しなければならないと話されています。
ところが、私には喘息がありまして、春とか秋には強い発作にみまわれることがあります。
降圧薬の中に喘息に悪い薬があると聞きました。
どのような降圧薬が良くないのか教えて下さい。お答え
ベータ遮断薬は注意が必要
朝の家庭血圧は125/75mmHg未満が目標ですので、治療の強化が必要です。
まずは、減塩をはじめとする食生活の改善や運動が推奨されますが、これだけで目標を達成するのは困難と思われます。
なお、運動については、運動によって喘息が誘発される人もいらっしゃいますので、先生と相談して決めて下さい。降圧薬の追加について、非選択性ベータ遮断薬およびアルファ・ベータ遮断薬は喘息に悪い薬です。
(アルファやベータは、神経を活性化するホルモンが結合する受容体の種類)
ベータ受容体を遮断することで心臓の心拍が減り収縮力も抑えられて血圧が下がります。
ただし、肺に空気を届ける道である気管支を収縮させ、通り道が細くなって喘息を悪化させることがあります。
新しい薬の追加の話の際には、先生や薬剤師に気管支喘息があることを必ず伝えてください。ベータ遮断薬の中にも心不全や不整脈の治療目的で処方されるベータ1選択性ベータ遮断薬という薬があります。
喘息への影響は小さいですが、病状を厳重に観察しながら使用します。
- E3.高血圧による臓器障害が出現している人の降圧治療は?
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質問内容
私は40歳の男性で銀行に勤めています。
私の父は63歳の時脳卒中で倒れ、リハビリを行いましたが左半身に障害が残っています。
父は、高血圧を軽く見て治療もきちっと受けなかったので罰が当たったと嘆いています。
最近私も血圧が上がり、I度高血圧だが他には異常がないので、先ず生活習慣の改善に努力することです、と先生から言われています。
高血圧が持続するとどこが悪くなるのでしょうか。血圧を下げていれば元に戻るのでしょうか。
よろしくお教え下さい。お答え
臓器障害の予防・増悪抑制・改善のためにしっかり血圧を下げましょう
自覚症状のない病気ですが、放置しておくと気づかない間に全身の様々な臓器を傷めます。具体的な臓器と病気は以下の通りです。
脳:脳の血管が高血圧によって動脈硬化が促進されて脆くなり、破裂したり(脳出血・クモ膜下出血)、詰ったり(脳梗塞)します。
一命をとりとめても、手足の麻痺や言語障害などの後遺症が残ることがあります。
これらを取りまとめて脳卒中と呼びます。
他に、認知症との関係も報告されています。心臓:心臓を養っている血管(冠動脈)が高血圧によって動脈硬化が促進されます。
その結果、狭心症(胸が締めつけられるなどの症状)や、心筋梗塞(冠動脈が詰まって起こる心臓の一部の壊死)を発症します。
心臓が高い圧力で血液を送り出す結果、次第に心臓の壁が厚くなり(心肥大)、心不全の原因になります。
心不全は、胸が苦しくて夜眠れなくなったり、呼吸困難や浮腫が現れたりする病気です。
高血圧は、心房細動などの不整脈の大きな危険因子でもあります。腎臓:高血圧は慢性腎臓病の原因の一つです。
腎臓の機能、即ち老廃物のろ過・排出に支障を来たします(腎不全)。
進行すると、最終的には尿毒症になり血液透析、あるいは腎移植が必要になることもあります。血管:高血圧は、大動脈の内膜が引き裂かれたり(解離性大動脈瘤)、こぶ状に膨らんだり(大動脈瘤)する病気の大きな原因です。
動脈瘤は一定の大きさ以上になると破裂の危険性が高まります。
足の動脈の傷害が進んで足先への血流が悪くなることもあります。
長時間の歩行で足が痛くなり休むと収まるといった症状が最初に現れ、進行すると足先の組織が死滅して足の切断を余儀なくされることもあります。眼:眼の網膜を栄養する動脈の傷害が生じ、眼底出血を来たしたりします。
これらの合併症は、食事・運動・降圧薬などで適正に降圧すれば予防可能ですし、臓器障害が生じていても悪化の防止や重症度の軽減が期待できます。
- E4.透析治療に入らないためには
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質問内容
私は68歳の無職の男性です。約20年来高血圧で治療を受けています。
久しぶりに検査を受けましたところ、eGFRが46 ml/分/1.73㎡、蛋白尿が1日0.4 gで、腎臓の検査値が悪いとのことでした。
血圧は上が140 mmHg前後、下80 mmHg前後です。
現在、3種類の血圧の薬を飲んでいます。
このまま治療を続けていればよいのでしょうか。いずれ透析治療が必要になるのではと心配でなりません。お答え
腎臓病の状態に応じた薬剤選択と、しっかりと降圧することが大事です
eGFRは推算糸球体濾過量というもので、腎臓にどれくらい老廃物を尿へ排泄する能力があるかを示す指標です。
60未満は異常です。尿に蛋白が出るのも異常です。高血圧を20年間治療してこられたのに、それでも高血圧によって徐々に腎臓が傷んで腎硬化症が進行している状態ですが、これからも適切に治療を続けることで天寿を全うするまで透析治療が必要なく過ごせる可能性も十分にあります。
腎臓の働きが悪くなるのを防止するためには厳格な24時間にわたる降圧が必要です。
目標は診察室血圧値130/80mmHg未満(家庭血圧では125/75mmHg未満)です。
現在飲んでいる薬の増量や新しい薬の追加について、主治医にご相談してください。糖尿病を合併している場合は、血圧の薬以外で腎臓保護に働く薬剤を用いることもあります。
治療の効果と副作用が出ていないかを判断するのに、血圧値に加えて血液(eGFRなど)や尿(蛋白尿)の検査を定期的にします。
その他
- F1.血圧測定が安静時である理由
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質問内容
血圧が上がると脳卒中などのリスクが高まるのはよくわかります。
日中動き回っている時などには血圧が上がるので、むしろ動き回った直後に血圧を測る方がリスクを正しく測定できるように思えます。
なぜ安静時に計測するのでしょうか。お答え
高い血圧によって脳卒中や心臓病などの脳心血管病のリスクが上昇するのは、心臓や血管が高い血圧に長時間さらされた結果です。
血管がストレスを受けている状況を代表する血圧値としては、安静時の血圧で評価する方が良いことが多くの研究で示されています。
24時間の血圧を基にした研究でも、昼間の血圧よりも夜間の血圧の方がこのようなリスクをより正確に反映することがわかっています。
これが、安静時に血圧を測定する理由です。運動などによって上昇する血圧は、全身に血液を送り出すために必要な生理的な反応で、上昇している時間も短いので時間をかけて進行する動脈硬化への影響は小さく、上昇の程度も状況によって大きく異なるので診断には用いません。
- F2.点滴(輸液)による循環血液量の増加と血圧の関係
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質問内容
循環血液量が増えると血圧も上がるように説明を受けました。
点滴(輸液)をした時も循環血液量が増加すると思いますが、その時に血圧が上昇して問題になることはないですか。お答え
点滴などの一時的な循環血液量の増加であれば、腎臓を通じて排出される仕組みが人体には備わっていますので、血圧上昇はおこりません。
- F4.妊婦・授乳中の高血圧治療
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質問内容
私は35歳の主婦で、仕事も一段落し、そろそろ子どもがほしいと考えています。
以前お医者さんから血圧が高めであると言われましたが、現在は薬を飲んでいません。
高血圧の治療をする場合、妊娠していても降圧薬は飲んでもいいのでしょうか。
妊娠と高血圧治療の関係を教えてください。
また出産後の授乳中の薬の服用についても教えてください。お答え
医師が血圧高めと言った値がどの程度かわかりませんが、治療の必要性は医療機関で判断してもらってください。
血圧の診断が正確かを判断するために家庭血圧を測定されるのもよいです。
少なくとも家庭血圧で135/85mmHg(医療機関の測定で140/90mmHg)を超えているなら早めに医療機関を受診してください。妊娠前は、一般成人と同じく130/80mmHg未満の血圧が望ましいです。
それを超えていれば、生活習慣を見直して必要に応じて改善を図ってください。
減塩、体重管理、運動が中心です。降圧薬が必要と判断された場合、ご本人から妊娠希望があることを医師に伝えて、薬の胎児への影響や妊娠が分かった段階での対応などを聞いてください。
胎児への影響がある薬もあります。一般には、妊娠に伴い血圧は低下します。
それでも、140/90mmHgを超えているようであれば「妊娠高血圧症候群」として厳重な管理が必要です。
降圧薬も使えるものが限られているため専門性の高い医師の診察が必要です。授乳中に服用が可能とされる高血圧の薬について、一般の高血圧でも使用頻度が高いものとして、ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、エナラプリルなどがあります。
降圧薬に限らず、授乳中の薬の服用については、かかりつけの医師、産婦人科、小児科の医師に相談してください。
母乳にどの程度の薬が混じりこむかに基づいて内服の安全性を判断します。
- F5.鍼治療で血圧が下がるか?
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質問内容
私は42歳のサラリーマンですが、最近社内健診で血圧がやや高めでありしばらく様子を見ましょうと言われました。
最近友人から鍼治療で血圧が下がると聞きました。
薬を飲まずに治るのならその方がいいのですが、本当に鍼で血圧は下がるのでしょうか。お答え
現在、高血圧の治療目的で鍼治療をすることは行われていません。
鍼治療で腰痛や関節痛などの痛みが改善して血圧も下がることはあるかもしれませんが、高血圧そのものの治療とは異なります。薬を飲まずに治るならという気持ちはわかりますが、医師の診察のもと、生活習慣の改善の指導を含めた指導を受け、必要に応じて薬で治療を受けることをお勧めします。
医師の診察に基づく治療は、血圧が下がるだけでなく、将来の脳心血管病(脳卒中や心臓病など)の予防効果も示されているためです。
- F6.世界高血圧デー
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質問内容
私は65歳の年金生活者ですが、最近新聞で5月17日は世界高血圧デーであることを知りました。
なぜ5月17日が世界高血圧デーになったのでしょうか。
日本でも何か行事があるのでしょうか。お答え
おっしゃるとおり全世界的に5月17日は高血圧の日(World Hypertension Day)と定められています。
これは国際高血圧学会やWorld Hypertension League(世界高血圧リーグ)で決められています。
なぜ5月17日かという特別な理由はありません。日本高血圧協会も世界高血圧協会に参加していますので5月17日の前後を中心に全国的に高血圧の予防と治療に関する市民講座を開催し啓発活動を行っています。